不器用なコイ
神谷町の愛宕神社に行ってきました。
位置が定かではなかったので、廻り込んでしまい、
本来なら86段ある階段を登って参拝するのが筋ですが、
車道を歩いて、神社に到達してしまいました。
文字通り、迂回。
神社の奥手には池があり、
池には、鯉がたくさんいます。
えさやり場に立つと、鯉が口をパクパクさせて殺到します。
ばしゃばしゃひしめきあって、口をあけて、みんなエサを待っている。
そんな池の中で、一匹だけ、集団に群れず、すいすい泳いでいる鯉がいました。
勘が鈍いのか、一匹狼なのか。
周辺を佇んでいるだけです。
しばらくたって、ようやく、彼がこっちに向かってきました。
しかし、前方はもう鯉でひしめきあっていて、前に行くのが容易ではありません。
みんなに比べて一回りからだの小さい彼は、
大きな鯉に体当たりされたり、行く手を阻まれたりして、
目的の場所にたどり着けません。
あきらめて、おこぼれをもらおうと、もみくちゃにされながらも、
必死に口をパクパクさせると、桜の枝とか、変なものが口に入ってくる。
それを吐き出しては、また口をめいいっぱいパクパクさせるけれど、
やっぱり、桜の枝が口の中に入って、むせてしまう。
しまいには、他の鯉が覆いかぶさり、彼は仕方なく、池の下へもぐって行きました。
鯉にも、不器用な奴が、いるんだ。
不器用な彼が気になり、目で追っていると、
あきらめたように、また、群れから離れ、群れの周辺をすいすい泳いでいました。
その姿はけっして、みすぼらしくない。
むしろひょうひょうとしていて、
私の目の前でもみくちゃになりながら口をパクパクしている、
色とりどりのたくさんの鯉たちと違って、
彼の世界だけは、視界が開けている。
そんな、気がしました。